夜は、いつも音から始まる。 昼の名残を引きずるような遠くの車の走行音、どこかの部屋で閉め忘れられた窓がきしむ音。それらが一つずつ消えていくと、世界はようやく自分の輪郭を取り戻す。 私は夜が来るたび、屋上に上がる。特別な理由はない。ただ、ここでは時間がゆっくりと溶ける気がするのだ。街灯に照らされたアスファルトは昼よりも正直で、影は誤魔化しを許さない。 今日もまた、彼女のことを考えていた。 最後に会ったのは、もう何年も前の夜だった。別れの言葉は短く、星の見えない空の下で交わされた。彼女は「夜は嘘をつかないから好き」と言っていた。その意味を、私はずっと理解できずにいる。
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