初めまして、魔法が使えない君

初めまして、魔法が使えない君
 治療薬を飲むと、病気が治ってくる代わりに、痒くなったり、髪が抜けたりする。お金を稼ぐと、暮らしが安定する代わりに、税金が重くなる。何かをすると、代償が必ず生まれる。美味い話がないのと同じ。今から話すのは、そんな代償を背負って、幸せを得た青年の話。  私の名前は橘香織。高校二年生だ。 「おはよう」 「おはよう、香織」 そう言って私に挨拶するのは、幼馴染の舟屋みのる。垂れ目気味の、見るからに気が弱い彼だけど、他の誰にもない特徴がある。それは…… 「踏切開かないね」 「ちょっと遅かったかな」 「遅刻したくないし、飛んで行こうか。それ!」 みのるが指を鳴らすと、みのるが宙に浮いた。宙に浮いたみのるが、私に手を差し出す。これこそが彼の力。彼は、魔法が使えるのだ。
AIS
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不定期投稿者です。単発系が多いと思います。