写真
写真にはこの世ならざるものが写るらしい。また、写真を撮られると魂も吸い取られるそうだ。どうも写真というものは人々に霊的な印象を与えるらしい。
私はカメラマンとして多くの写真を撮ってきた。家族写真、学校のアルバム作り、お見合い写真、田舎のしがない写真館ではあるが、ありがたいことに仕事は少なくない。何千何万と撮影してきたが、不思議なものは何一つ写らなかった。だが、写真には確かに特別な何かが宿っていると感じる。
写真館を開業したての頃、知り合いの葬儀屋から写真撮影を頼まれた。この辺りでは、葬儀のときに親戚一同の集合写真を撮る文化があるのだ。葬儀での撮影ということで、心霊写真になったらどうしようなどとくだらないことを考えていたのだが、完成した写真を見た私は涙を流していた。なぜ泣いたのかはわからない。故人も参列者達も誰一人接点はないはずなのに、その写真からなにかを受け取ったのだろう。なんの変哲もない写真だが、そこにはどこか特別な空気があった。“魂が宿る”とは、こういうことなのだろう。被写体の想いが写真を通して伝わってくる。実にミステリアスで情緒ある現象だ。
それ以来、私は写真に対してより真摯に向き合うようになった。今まで撮影してきたすべての写真と、受け取った想いは一時も忘れたことはない。彼らの魂は写真がある限り受け継がれていくのだろう。その手助けが出来る私の仕事を誇りに思う。
さて、今日は卒業式の集合写真だったな。一体どんな想いが待っているのか。
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2022/3/27 17:28
絵空