輪廻の先で、あなたとともに。

地上は、既に人類が生きていける環境ではなかった。かつてのライフラインは全て滅び、インフラは崩壊し尽くした。 人類は飢えを凌ぐ術を持たず、弱き者はただただ餓死を待ち、力ある者は奪い合う事しか出来なかった。 私はそんな世界で、アスファルトが剥がれた悪路を、杖をつき歩いていた。かつて愛した女から受けた裏切りを胸に秘め、変わり果てた世界を歩く老爺の姿は、老いぼれながらも生にしがみつく、醜く滑稽なものに見えることだろう。 今も脳裏には、女との愉快な日々が、昨日の事のように鮮明に蘇る。 甘く、二度とない、夢のようなひととき。 それが今はなんだ。失われた生気、筋力、思考力。変わり果てた世界。約束を反故にした代償にしては、地獄が過ぎる。 私は水を求めて彷徨っていた。この先に確か小さい湖があったはずだと、記憶している。何年前の記憶かは、もう定かではないが。飢えた人間をまばらに見かけるが、誰も私の事など見向きもしない。ほぼ裸のような姿をした骨ばった老人が何か食料を持っているなどと、誰も思わないのだ。無論、持っていない。必然、私を見て涎を垂らす者は、死肉で肥えたカラスだけとなる。 こいつはもう死ぬな、と、品定めする目を向け、汚い声で煽る。こいつらからしたら、さぞ楽園なのだろう。この、屍に充ちた世界は。 無作為に延びた雑草を掻き分け、蔦の絡む木々を躱し、私はひたすらに歩いた。
P.N.恋スル兎
P.N.恋スル兎
嫌なことは嫌々やれ。 好きなことは好きにやれ。 名前は、兎年から始めたのと、DoDが好きなのと、ポルノグラフィティが好きなのでそこから取ってます。