かたつむり(短編)

「君ってほんとに足が遅いね。僕の脚分けてあげたいくらいだよ。」 ある日の夜、8本脚の蜘蛛は蝸牛を馬鹿にするようにそう放った 「そうだよね」 蝸牛は少し酸っぱそうな顔をしながら笑っている 「それじゃあ、せいぜい頑張りな」 蜘蛛が笑いながらその場を離れていくと、僕はすぐに蝸牛の元へ駆け寄った 「かたつむりくん大丈夫?あんな事を言うなんてくもはほんとにひどいやつだなぁ」 僕がそう言うと蝸牛はゆっくりと、優しくこういった 「たしかに僕はみんなよりたくさん動き回ったり、速く走ったりすることはできないかもしれない。だけど、少しずつでも前に進んでいるという事実が僕にとってはとても嬉しいんだ。周りはどれだけ速くても、どんなことを言われても僕は僕のペースで進んでいこうと思う。僕が進んできた道は絶対に消えないからね。」
短編小説愛好家