第二話 教習中

「やべー今日も遅刻だ」 どうにも最近眠たくて、朝はなかなか起きられない。スマホのアラーム機能だけでなく、実物の目覚まし時計を買って二重で鳴らしているのだが、それでも夢の世界は俺を離してくれない。 パンを咥えて走りながら、この間体験した不思議な出来事のことを思い浮かべる。 「ありゃ一体、なんだったんだろうな」 幽霊に出会った。それも無免許の。 自分に霊感があるなんて全く思ったことがなかったが、この目ではっきり見えたのだからそういうことなのだろう。 幽霊とは恐ろしいものだと思っていたのだが、あの少女は生きている人間と同じような見た目で同じような喋り方をしていたので、全く怖くなかった。 「はは、ここでまた会ったりして」 そんなことを考えながら、例の交差点に差し掛かると。 「う、うらめしや〜」
吉口一人
吉口一人