鳴らした音の行く先は 5-6
第五章六話 失った悲しみ
私は犬のぬいぐるみを持って、三人と向き合っている。
「私ね、両親と会ったんだ。両親は私と会いたくなかったと思うけど。それで、私のことは必要ないって言われた。でもね、全く悲しくなかったんだ。両親が失踪する前日の夜に感じた感情さえ、もう残っていなかった」
言っていて、悲しくなる。やっぱり私は…
「このぬいぐるみはね。私の本当のお母さんのなんだ。でも、怖くて仕方がない。気づいちゃったんだ。あの夜に。このぬいぐるみの中身はきっと」
そう言ってぬいぐるみの背中を割く。
ああ、やっぱり。
そこには白い綿は入っていない。黒い細い糸のようなもの。
「これは私の本当のお母さんの髪の毛だと思う」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/5/11 21:55
傘と長靴
自分の書いた物語を誰かと共有したいと思い始めました。
拙い文章ですが、目に留めていただけると、幸いです。