鳴らした音の行く先は 5-6

鳴らした音の行く先は 5-6
第五章六話 失った悲しみ  私は犬のぬいぐるみを持って、三人と向き合っている。 「私ね、両親と会ったんだ。両親は私と会いたくなかったと思うけど。それで、私のことは必要ないって言われた。でもね、全く悲しくなかったんだ。両親が失踪する前日の夜に感じた感情さえ、もう残っていなかった」  言っていて、悲しくなる。やっぱり私は… 「このぬいぐるみはね。私の本当のお母さんのなんだ。でも、怖くて仕方がない。気づいちゃったんだ。あの夜に。このぬいぐるみの中身はきっと」  そう言ってぬいぐるみの背中を割く。  ああ、やっぱり。  そこには白い綿は入っていない。黒い細い糸のようなもの。 「これは私の本当のお母さんの髪の毛だと思う」
傘と長靴
傘と長靴
 自分の書いた物語を誰かと共有したいと思い始めました。  拙い文章ですが、目に留めていただけると、幸いです。