旅路の魔法使い
俺の前には沢山の観客がいた。俺達の周りを取り囲んで、ケストの踊りを眺めていた。ケストはくるくると回転してアクロバティックなダンスを披露する。それに合わせて俺はリュートを弾く、ケストの動きに注目して、ケストが次にどんなダンスがしたいか予想する。ケストと予め決めておいたラインナップがあって、その中からケストが動きを決める。そうすると、俺が決めておいた音楽をリュートで弾く。
ケストは俺が見込んでダンサーとして育てた。昔から、故郷で俺が下手な横笛を吹いて遊んでいた時から、ケストはくるくると回って女の子にしては細長い体で踊っていた。
ある日、親友の家で遊んでいたら、ケストがまたくるくると踊っていた。
ダンスには音楽が付き物だから俺は得意のリュートを鳴らしてやった、俺にとって当たり前だったから。そしたらまだ小さかったケストは喜んで、俺はケストとよく、踊るために親友の家に行くようになった。いつの間にか親友より仲良くなったものだから、嫉妬されただろうな。
俺は旅がしたかったんだ。大好きな音楽で生計を立てて、国と国の間を渡り歩く。そんな生活を望んでいた。
今、俺の目の前にはそれがあった。昔の俺が望んだ物は今この前に広がっている、ケストが踊って、俺がリュートを弾き、周りの観客たちが大勢で嬉しそうに手を叩いている。
俺はニヤリと笑った。ケストはそれを見たらしい、クライマックスを踊ろうと俺に伝えた、俺はスピードを上げた、なるべく速くて大きな音を出すように気を付けながら弾く。これで観客は大喜び、歓声を上げて俺達が腰を曲げて帽子を地面に置くと直ぐに沢山の銅貨が放り込まれた。銅貨だけではない、銀貨だって数枚入っていた。
ケストが息を切らしながら、笑って近づいてきた。
「やったね」
「ああ、よかったな」本当に良かった、また上手くなったんじゃないか?
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2026/3/15 5:40
鶴さん
特に西尾維新、森博嗣、舞城王太郎が好き。書きだめが沢山あります
(`・∀・)ノイェ-イ!