透明の回廊

朝でも夜でもない、色のつかない時間があった。 その境目に、私はふと足を踏み入れてしまったらしい。 目の前に広がるのは、薄いガラスを何枚も重ねたような世界。 触れれば割れてしまいそうで、けれど風だけはすり抜けていく。 足元の道は、水の底のように、少し青く揺れていた。 歩くたびに、透明な音が「カラン」と鳴る。 私の影だけがついてこない。 代わりに、見たことのない光が、私の形をして寄り添ってきた。
三秋 うらら
三秋 うらら