透明の回廊
朝でも夜でもない、色のつかない時間があった。
その境目に、私はふと足を踏み入れてしまったらしい。
目の前に広がるのは、薄いガラスを何枚も重ねたような世界。
触れれば割れてしまいそうで、けれど風だけはすり抜けていく。
足元の道は、水の底のように、少し青く揺れていた。
歩くたびに、透明な音が「カラン」と鳴る。
私の影だけがついてこない。
代わりに、見たことのない光が、私の形をして寄り添ってきた。
2
閲覧数: 198
文字数: 797
カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/11/10 6:57
三秋 うらら