アスファルトが奏でる陽炎。日光を溢れるほど浴びた、向日葵の群れ。果てしなく続く青を、入道雲が隠していた。 「もう帰ろうよ、茹で人間になっちゃう。」 「もうちょっと!」 彼女はシフォンのマキシワンピースに身を包み、麦わら帽子のつばを抑えた。風に揺れる黒髪がよく映える。『夏』を擬人化したかのような少女。……本当にこいつは、季節というものを最大限に楽しむよなあ。嫌いじゃないし、良いとさえ思う。だけど…… 「私を巻き込むのだけはやめてくれない?」 額から絶え間なく汗が流れる。
卯月
卯月