ささやかな逃避行

 別に、僕のことなんかを知ってる奴なんか居ない。それでもなんとなく、僕が僕であると知られたくなかったんだ。  だから名前を変えて、顔の知られていない場所を選んでここに来た。  別人になりたいって願望があったのかもね?  僕のことを知る人が誰もいなければ、僕は自由に振る舞えるだろう? 誰の目も気にすることなく、今後のことも、僕の行いが及ぼす影響も考える必要がない。そういう、素敵な場所に逃げたかったんだ。  そうだよ、これは逃避行動。  嫌になってしまったんだ、何もかもが。  元の自分というものを何もかも捨て去ってしまいたい衝動に駆られたんだ。誰しもそういうことはあるだろう? そういうことだ。
渡月カユラ
渡月カユラ
薄暗い感情を書きます