しまうよる
一幕・夜ノ街
夜が太陽を喰い散らかし、街がとっぷりと暗闇に浸かる。辺りはしんしんと全てを受け入れている。昼間、ものものにぴったりとくっつき縮こまっていた影らは、今や我が物顔で建物やら木々やらにべったりと貼り付き、輪郭線をなぞっては暈す。そして街がのっぺりとして闇に慣れた頃、影たちがのそりと動き出す。
遥か上空からはころころきらりと欠片が落ちてくる。死んだ文字たちである。彼らは影に触れた途端ぱきりと割れる。途轍もなく微かな光が弱々しく漏れる。すかさず、すいっぱくりと影が欠片を飲み込む。
ああ落ちてくる、ああ飲み込む。果てしない夜のいとなみがえんえんと紡がれる。ひとが眠るとき、文字もまた長い旅へと立つのであった。
一幕・自称番人
死んだ文字たちを最終列車に詰める、それが私の仕事である。古びた箒をせっせと動かし、文字たちを集めては次々と列車に放り込む。文字は列車の底で折り重なって、重みに潰されている。時折ぴょんと、死んだ文字が窓から戻ってくる。そいつを拾ってやって、服の裾でごしごし綺麗にしてやって、またぽいっと列車に放り込む。ただ詰め込む、ただ繰り返す。そうして夜は更に深まっていく。
列車が一杯になったらベルをかんかんと打ち鳴らし、こんこんと石炭を焚いて、南十字星を道導に終点へ向けて出発する。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/9/30 12:34
最終編集日時: 2025/10/1 9:53
ひるがお
見つけてくれてありがとうございます。