記憶

記憶
 僕は様々な人と接していく中で、自分の中に一つの結論を見つけた。由美との想い出は決して忘れることはない。自分の中にずっとあり続ける。辛い時、悲しい時、嬉しい時、全ての状況で由美を思い出すだろう。だが、それが僕の道を縛ることは決してない。由美の死は確かに僕の心に大きな傷を与えた。しかし彼女の存在は僕を強くし、次のステップへと導いてくれていた。これからもこの事実は変わらない。  僕は埃の被った由美の写真を手に取り見つめた。 「由美、ありがとう。僕はこれから前を向いて生きていくよ。でも決して由美のことは忘れない。いつも空の上から見ていてくれると信じてる。」 僕は一人でそう呟き家をでた。    太陽が眩く僕を照らす。川のせせらぎが心地よく聴こえる。元気な子供達が公園で遊んでいる。木々のざわめきが生を感じさせてくれる。僕の夏はあの日から止まったままだった。しかし今年の夏は終わろうとしている。残暑の影響か道路に陽炎がゆらゆらと揺らめいている。陽炎の中に笑顔の由美が見えた気がしたが、夕焼けで消えてしまった。不思議と寂しくは無かった。僕は来年の夏が待ち遠しい。 「また、来年会おう」 僕はそう一言呟いて前を向いて歩き始めた。揺れる陽炎に背を向けて。
テツヤ
テツヤ
初心者🔰です。拙い文章かと思いますが読んで頂けたら嬉しいです。