フレイル=サモン〈CLⅦ〉

フレイル=サモン〈CLⅦ〉
サウラ国領土〈ジェノバ中央都市・国軍運用地「黒の食堂」〉  国軍運用地には大勢の軍人がいる。そのせいもあってか、寮や訓練所以外の殆どの建物は大きな食堂になっていた。あまりにも数がありすぎるため、基本的には色で区別されているらしい。  それぞれが独自の色彩を看板に連ねる中、アンが連れてきたのは“黒”の食堂だった。昼食時のため軍兵でごったがえしていることを覚悟していたが、彼女が指し示した食堂は意外にもがらんと空いていた。 「私がこっちに住んでたときからの穴場なんだ。まだそのままだとは正直思わなかったけれど」 頬に垂れた金髪を指先で弄る。彼女は盛況していない門構えに人知れず肩を落とした。  入り口には年季の入った暖簾がかかっており、そこを境にして客の声が少なからず聞こえてきた。同時に、油をたっぷり使用した肉料理のような香りも漂ってくる。  食堂内には計4〜5人の軍兵と、エプロン姿の女性が目に入った。身軽に食器を配膳するその姿は、腹にくっついた堕肉などこれっぽっちも感じさせない。てきぱきした仕事運びに、フレイルは彼女が大ベテランの店員であることを勘づいた。 「いらっしゃ…あらノアン!久しぶりじゃないの!」
クリオネ
クリオネ
来年度まで活動休止中〜♪ ※注釈※ 時折り過去話に手を加える事があります (大きく変えた場合は報告します) 定期的なご確認をお願いします。 novelee様の不具合か、 長い文章の一部が 途切れている場合があります。