本を喰う怪物(触)
2010年8月25日、赤いランプが点灯し、都内の大学病院に二人の少年(仮に少年AとBとする)が運び込まれる。歳は五歳から六歳くらいで二人は痩せ細り、ひどく衰弱していた。深夜に患者が病院に搬送される事はさほど珍しい事では無い。ごく当たり前の光景。しかしこの日は違った。何故なら病院の周りには少年達を一目見ようと大量の記者達が集まっていたからだ。
銀色の担架ストレッチャーを引いた救急隊員の後に続いて医師達が駆け足で廊下を突き進む。談笑しながら廊下を歩いていた夜勤終わりの看護婦達は、すれ違う医師達を見て思わず立ち止まる。
「遠山先生に氷川先生……それに不動先生も……」
「何かあったのかな?レジェンド医師ばかりじゃん?」
憧れを乗せた眼差しを送る若い看護婦達だったが、汗を拭う彼らを見るとすぐに只事では無い様子に気づいた。如何なる場合でも冷静さを失う事は無い彼らだが、この時だけは違った。廊下を走り回り、怒号とも聞こえる呼びかけを繰り返す彼らはまるで普段とは別人格。周りを取り囲むマスコミを両手で払いのけ、ブルーの抗菌衣を纏うと次々にICUへと入って行く。
「お願いですから離れてください!」
入口に群がる記者達に向かってベテラン看護婦が叫ぶ。女性に似つかわしく無い程のたくましい腕でカメラをグイと押し退け、その反動で思わずよろめく記者。一台数百万の機材などは看護婦にとってはお構いなしの様子。それもそのはず、今現在起こっている事態はそれ程の事なのだ。
「何事だ!?これは」
いつになく慌ただしい様子を見た大学病院の院長は自室から飛び出し、走り回る看護婦の腕を捕まえて問いただした。
「おい君、この大勢の記者達はなんだ?」
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カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2025/2/9 17:28
最終編集日時: 2025/2/9 17:41
猫 夢丸
初めまして、夢丸と申します。小説初心者の二十代半ばの社会人ですが、空いた時間にチクチク見たり書いたり。宜しくお願い致します。