憑依霊の独白

憑依霊の独白
 私は憑依霊である。名前はもう忘れた。  私は人に憑依してその意識を乗っ取る悪霊である。ただし憑依した途端に対象の記憶中枢から記憶を読み出してしまい、それで全ての記憶が上書きされてしまう。  私が辛うじて覚えていることは自分が悪霊であるという事実のみであり、それ以外には自力で覚えることも考えることもできない。  記憶や思考は脳に備わった物理的な機能であり、憑依状態でない悪霊は単独でこれらを行うことができず、虚しく宙を漂うのみである。  私はいま憑依している人間の前に、別の人間に憑依していたはずだが、その時のことを何も覚えていない。主観的には生まれてからいままでずっとこの人間であったかのように感じられる。  このような憑依霊が地球上に数千億ほど存在しており、入れ替わり立ち替わり人間に憑依を繰り返している。
事務用たんぽぽ
事務用たんぽぽ
友達からは運だけの春日と呼ばれてます。 小説を書きたい。いつも眠たい。 ついったー → @comiciz_tw 浮気されたから浮気した(天才)という小説が一番よく書けた気がするのでそれを読んでくださいっ!