春の木漏れ日より、甘やかに

 下校のチャイムが、帰宅する生徒の声に紛れてぼんやりと鳴り響く放課後。廊下に面している窓側の席に、女子生徒が一人席に座っている。夕陽に照らされて、女子生徒の純白のセーラー服が眩しい廊下を、クラスメイトがほとんど帰った教室内で、帰る用意をしながら真塚桜はなんとなく眺めていた。 気の早い担任は早々に教室の電気を消し、誰よりも早く教室を出ていってしまった。 提出しなきゃいけないプリントあったのに、と桜は引き出しの中にあったプリント一枚に目線を落とした。職員室に行くのは好きではない。コーヒーの香りのする職員室はなんだかソワソワしてしまって、なんとなく居心地が良くないのだ。 呆れたように息を漏らす。 「さくちゃん、なんかあった?」 ハンドクリームを塗りながら、一目で誰かわかる挙動をして桜の方へ歩いてくるのは、幼馴染の日守光里だ。 「出さなきゃいけないプリントあったの、忘れてたから職員室行かなきゃいけないって思っただけ」 いつもの調子で返事を返す。いつも間にか仲良くなっていた光里とは、保育園からの付き合いだ。そのせいか、他愛もない会話にはとても平坦な声で返してしまう。長年の付き合いだと頑張らなくとも会話ができるんだな、なんてことをふと思う。 「ふーん。そういえばさくちゃん。さっき思いついたんだけどさ、リヴォウィ兵士の声真似で喋るなら、イイ声出そうってするより、なるべく自然体で吐息ましましにした方が、キモくないで真似できると思うんだよね」 相変わらずどうでもいい発言をする光里は、最初こそ苦笑いしていたものの、今となっては日常会話の一部となっている。
御縁明々
御縁明々
時間がある時に書いています。いろいろな物語が書けるように練習中です。 気に入ってもらえたら嬉しいです! 不定期に投稿しています。