年末、一恵にとって欠かせない恒例行事はお餅作りだった。もちつき機を使い、孫や子供たちに手作りのお餅を振る舞うのが楽しみであり、家族にとっても大切なイベントだった。クリスマスを過ぎると、商店街は正月準備で賑わい始め、一恵もいつものようにもち米を買いに出かけた。 「もち米くださいな」と、一恵はいつもの店で声をかけた。 しかし、店員は申し訳なさそうに答えた。「今年はもち米が不作で、どこも品薄なんです。今は在庫がありません。」 「少しでいいのよ。孫にお餅を作ってあげたいだけだから……」 「すみません、本当に無いんです。」 一恵は肩を落として店を出た。帰ろうとしたその時、不意に声をかけられた。 「ご夫人、もち米をお探しですか?」
南風颯太
南風颯太
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