ハンディファン

夏になると、彼は毎日忙しそうにしている。 すれ違うたび、白いシャツの袖口から覗く涼やかな風が、私の頬をくすぐる。 私の視線に気づくと、彼は少し笑って見せるけれど、その笑みの奥は誰のものでもない。 そう、彼はみんなの“涼”を与える存在だから。 私は彼に触れたい。 その指先から溢れる爽やかな風を、独り占めしたい。 けれど、そんなことをしていいのだろうか。
ruki
言葉の欠片集めてます。 上手く言葉にできるように。 感情が溢れ出ないように。