金魚と恋

金魚と恋
 あら、ちょいとそこの主さん。わちきの話を聞いてくれんすか。ええ、主さんでありんすよ。時間は取らせんせんから、どうか聞いておくんなんしな。  昔、それはかわいらしい人が花街にいたそうでありんす。まるでひっそりとしたつくしのような、賢うて素朴なお人。  いいえ、もちろんその人のお話でありんすけど、大切な人が出ておりんせん。これはとある二人のお話なんでありんす。  その人は恋をしておりんした。花街に身を置きながら、それは許されることではありんせんでありんした。  いえ、いえ、確かにその人のいた場所は恋をするところでありんした。人を醜う愛するところでありんした。そうではありんせんのでありんす。そうではありんせんのでありんすよ。その人は、ああ、可哀想なことにまことの恋心を知っちまったのでありんす。  金魚のようなお人でありんした。彼は、そう、金魚のようなそんなお人でありんす。ひとたび捕まえようと手を伸ばすと、するりと彼は手をすり抜けるのでありんす。  しかし、ああ、その人は自分を賢いと思ってやしたが、その実、全く賢うはありんせんでありんした。全くでありんす。そのつくしの身を焦がす、燃え上がる恋心を隠し通すことができのうござりんした。
ひるがお
ひるがお
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