寿楽荘、曰く憑きにつき〈8〉

寿楽荘、曰く憑きにつき〈8〉
 ————これは・・・・・・また夢、なのだろうか?  それとも此処は————死後の世界か?  まるで水の中に浸かって揺らめいているみたいだ。  何処か懐かしさを思わせる安心感に全身を包まれている感覚。  そう、例えばまだ言葉も上手く話せなかった幼い頃の事を思い出す。薄ぼんやりとした記憶を覗くと、あの頃はいつも傍らに母が居た。  慈愛に満ちた優しい笑顔と柔らかな声は、自然と安心感を与えてくれていた。  優しさに満ちた微笑みを湛え、その手で幼子の柔肌に触れたかと思えば、掬い上げられた身体は両の腕に抱かれて、すっぽりと大きな愛で包まれる。  幼いが故に言葉に表す事は出来ずとも、心の奥に感じる確かな温かさがそこにはあった。  柳田自身もそれを記憶として認識している訳ではない。
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
皆様初めまして。華月雪兎です🐇 「雪」に「兎」と書いて「ゆと」と申します💡 現在は掌編、SS、短編から中編サイズの小説を書かせて頂いております。 恋愛系短編集 『恋愛模様』 ミステリ/ホラー系短編集 『怪奇蒐集録』 をエブリスタ、Noveleeにて不定期連載中📖🖊