第一話 弔花の蜜

第一話 弔花の蜜
 モノクロームの空間に響くお経と木魚が信じ切れない現実を僕に突きつけてくる。 (叔母さんが亡くなった…夢じゃない…これは現実……) どんなに自分に言い聞かせようともやはり現実味がないのか全く涙が出てこない。たくさん可愛がってもらった思い出はあるのに。 (こんな僕は薄情なのかな) 「ほら涼太、叔母さんにお別れして来なさい。」 少し震えた母親の声がした。 ゆっくりと前に進んで、遺影と目を合わせる。 (いつ撮ったんだろう…) どうでもいいことを考えながらお焼香をつまんで大人たちの真似をする。ここからの記憶は曖昧で気づいたら葬儀が終わって周りの大人たちはまばらになっていた。ふと部屋の隅を見るとセーラー服を着た女の子が立っていた。
千莵
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