Moon Light

Moon Light
俺を見つめる少年の瞳は、すでに死を受け入れた者のそれだった。 黒く濁りきった瞳の奥には、光も、怒りも、悲しみさえもなかった。ただ「無」。 両親は嬉々として言う。 「この子、今日買っていただけないと、明日にはロシアの植民地へ送られる予定でしてね。」 その声が続いたが、途中から俺には聞こえなくなった。いや、耳を塞いだのは俺自身だ。 ――なぜ笑えるんだ。自分の子供を売る話をしながら。 俺の腹の底で熱いものが蠢いた。吐き気にも似た怒りだった。
かつらな
かつらな
現役女子高生、17歳。 かすかな痛みと夢の残り香を言葉に変えて、生きている証を綴る。