Moon Light
俺を見つめる少年の瞳は、すでに死を受け入れた者のそれだった。
黒く濁りきった瞳の奥には、光も、怒りも、悲しみさえもなかった。ただ「無」。
両親は嬉々として言う。
「この子、今日買っていただけないと、明日にはロシアの植民地へ送られる予定でしてね。」
その声が続いたが、途中から俺には聞こえなくなった。いや、耳を塞いだのは俺自身だ。
――なぜ笑えるんだ。自分の子供を売る話をしながら。
俺の腹の底で熱いものが蠢いた。吐き気にも似た怒りだった。
0
閲覧数: 3
文字数: 1367
カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/10/3 3:41
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
かつらな
現役女子高生、17歳。
かすかな痛みと夢の残り香を言葉に変えて、生きている証を綴る。