たったひとつの贈り物
皮膚を突き刺して身体中の細胞の全てを破壊するような日差しから逃れるために職場の目立たない片隅に設置されたプレハブの喫煙室に入りタバコに火をつけ、窓の外の憎たらしいくらい暑くて青い空を見上げた。
ちょうど7〜8年の今頃だった。夏休みが明けて気怠い二日酔いの身体を引きずるように学校へ行ってみると、校門の前に古ぼけた軽自動車が現れた。その助手席から降りて来たのはaだった。俺がこっそり片思いしていたaは夏休み中に大学生と思しき彼氏ができたらしく、その彼氏の所有物なのか親の物なのか、どちらにしてもそこそこキレイな女子高生を乗せて送迎するには些か「ショボい」自家用車で登校してきた。
その光景を目の当たりにして自分の中で事実として処理・容認することが出来ず、校舎には入らず真っ直ぐ家に帰って迎え酒を引っ掛けた。
卒業を間近に控えた頃、aは彼氏の通う大学に合格したと人伝に聞いた。就職する俺とはまるで違う世界の人間になってしまう気がして悲しくなった。
「なぜaを好きになってしまったのだろう…」
そんな後悔ばかりがフィジカルとメンタルを支配する。未だにaが好きなことを改めて自分が自分に知らしめる。自分以外の男、それも車がショボい男を好きになったaを好きでい続けることは苦痛だった。なのに「aが好き」を止めることができなかった。そしてこの「好き」を伝えることすらできなかった。
aに対しての好意と後悔が積もり、思い切って告白を決意した。決行は卒業式終了後。人気のないところに連れ出して思いを伝える。しかし他の同級生(卒業生)の大群がaを俺の視界から遮断してこの計画を阻むことも想像に難くない…
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2023/2/11 11:10
ハヤト