薔薇は…
「昨日、薔薇を見たよ」
偵察任務の最中、戦友が呟いた。
「バカ言え。こんな戦場にか?」
俺が茶化して応じると、戦友は黙って前方を顎で示した。
遠くに砂漠の街が見える。テロリストが潜伏する街。間もなく空爆される予定の街。今まさに、その街の門から何か小さなものが走り出たところだった。
スコープを覗いて確認すると、それは一人のみすぼらしい少年だった。
少年は、いつ撃たれるかも知れない状況の中を、家族のための水桶を抱えて、懸命に走っていた。
気高く、真っ直ぐに、自分の誇りにかけて。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2021/11/2 18:59
泥からす
短くて、変な小説を書きます。ノンジャンルです。