少女

その店は、満月の夜だけ現れる。  看板も灯りもないのに、迷っている人だけがたどり着けるのだという。  扉の奥に広がるのは、瓶の並ぶ静かな部屋。 瓶の中には“目に見えないもの" 言えなかった言葉、忘れたい記憶、もう一度会いたい人の気持ちが詰められていた。  店主は言う。  「ここでは、“言えなかった想い”を売っています。ただし、何か大切なものを置いていってもらうのが決まりです」  その夜、ひとりの少女が現れた。  「妹に“ごめんね”って伝えたいんです。あの日、ケンカしたまま……」
寸志
寸志
はじめまして 恋愛小説を書くことが多いです。