灰色の肉じゃが

灰色の肉じゃが
 その肉じゃがには色がありませんでした。ごろごろとした大きなじゃがいもの入った、つゆがたっぷりの、色のない肉じゃがです。にんじんやいんげんさえも、悲しい灰色でした。  ドアの一つだけある白い大きな部屋の真ん中に、ぽつんとダイニングテーブルがひとつ。私はそこについて肉じゃがを眺めていました。  私は、なんの疑問も持たずそれを食べ始めました。味はするような、しないような。ともかくそれは、肉じゃがでした。  私はそれを、正面に座っている女性と一緒に食べていました。彼女の肉じゃがにも同様に、つゆがたっぷりと入っていました。  私は、灰色の肉じゃがを黙々と食べ進めました。  彼女は食べるのが早く、私がちびちびじゃがいもを突いている間に、肉じゃがを食べ終わってしまいました。  正面から、バシャンという音が聞こえました。私は肉じゃがをつまみつつ、ちらりとそちらを見やりました。  女性が、灰色の肉じゃがの残り汁に顔面を突っ込んでいました。はじめはぼこぼこと空気の泡が、彼女の鼻から口から出ていましたが、やがてそれもなくなりました。  そして、彼女は動かなくなりました。
サーモンハンバーグ
サーモンハンバーグ
小説やらを書散らす、自称小娘です。 Twitter▷▶︎▷▶︎ https://twitter.com/salmon_humburg_?s=21