IN JAPAN

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 巨大に恐れを抱いて、身を捻ってみた。そうして溶けたように手をそっと出して地面に着地するとぬるりと立ち上がる。サムエルは特に表情も変えずに「博戸さん」とだけ呼んだ。彼は大いに焦って、何から話そうかとアタフタしつつ「いやあね」と手を上げた。それでも事実を話せばどんな顔をされるかも分からない。 「根津さんですか」 「……何処でそんな情報を……」 「ピスキスが」と、指差す。ピスキスは激怒して仁王立ちし、顔を真っ赤に染め上げていた。髭もぴんと立っている。 「お前ッ!! いい加減にしたまえ! この私を置いてアメリカで賭博など! 笑止千万!」 「まあまあまあ」 「どうでしたか。根津さんは」  サムエルが頭だけを寄せてこちらを凝視してくるので、博戸は適当な料理店を指差して「あそこで話そう」と声をかけた。その料理店は至って平凡な見た目をしていた。机は木製で、酢と魚類の匂いに満ちている。その空間の中、眉の太い老人が素手で寿司を握っていた。手には包丁の古傷があって、目つきが鋭い。彼らは真ん中ら辺を選んで座り込む。そしてピスキスが「大将、大トロ!」と叫んだ。それに続くように博戸がコソコソ言う。 「彼は私だと気づいてないよ。どうせバレても彼にとってはどうでも良いと思うけどねえ……黑麒麟も、結局求めているのはピスキス君のような低賃金で蟻のように働く愚か者ってわけさ。私のように、人を真似ては賭博をして生きているだけの博徒に用なんてない」 「……お前、博徒なのか?」
愛染明王
愛染明王
麒麟曰く「我草花を踏まず。獣虫を殺さず。世が平安なる時、街へ降り人の前に立つ」