邂逅する若き咎人

 ダルタンは地を穿ち震えさせる轟音で目を覚ました。  再び夜空を見上げたその時、謎の飛行物体が彼の視界を横断していく。  ダルタンは一つ、二つ、三つと目で追いかけて、それが瞬く星々の下で群れを成していることに気が付き、数えるのを止めた。終わりが見えなかった。  やがて月明りが飛行物体の正体を露わにする。  注意深く観察していたダルタンの虹彩に、威圧的な狼のシンボルが映り込む。そして彼は、それらが米国特殊部隊の武装ヘリだと気が付く。  ダルタンの生まれ故郷、ルクセンブルクが米軍に滅ぼされた時も、彼は全く同じ光景を目の当たりにしていた。 「僕のことを追いかけて来たのか……?」  急いでリオラを担ごうとしたその瞬間、ダルタンの視界が不自然に明滅する。隅に追いやった男の死体から微かに光が漏れ出ていた。  ダルタンは男の上着を力任せに引き剥がす。すると、コートの内側から米軍に属することを示唆するドッグタグと、光の出所である通信機器が露わになった。 「浮浪者のふりをして近づいて来たんだ……早く逃げないと」
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。 主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。 「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。 合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。