食育

食育
 仕事を終えて、帰り道を一人で歩く。  今日も疲れた。  上司は、相変わらず無茶な仕事を平然と僕に振ってきた。その上、言うことは二転三転していく、結局、よくわからないことになる。  部下は、僕の意図したものとは異なる作業をしていた。そもそも、僕の伝え方が悪かったのか、作業の目的すらよく理解できていなかった。それを怒るわけにもいかないので、なんとか笑顔を保ちながら訂正のお願いをした。  結局、今日も自分の仕事はあまり進まなかった。少しばかり、急ぎの仕事のために残業してから、退勤する。  これが中間管理職か。そんなことを思いながら、とぼとぼと歩いた。  悶々とするけれども、気持ちを切り替えなければ。家には、妻と娘が待っている。彼女たちのためにも、腐った気持ちを引きずっていてはいけない。心配をかけないように。立派な父親、優しい夫でいられるように。僕は、一歩一歩、帰り道を歩きながら、少しずつ気持ちを切り替えていった。
尾鰭(おひれ)