拝啓、妹へ。

あなたが家に来た日のことを、僕は思い出せません。ただ、小さい命に触れて、これが何故動いて、呼吸しているのだろうと不思議に思っただけでした。 あなたはおとなしく、あまり泣くことのない赤ん坊でした。むしろ僕は泣かなすぎて心配になったぐらいですが、あなたは元気に大きく育ちましたね。 僕とあなたは10近く歳が離れていたので、僕があなたの遊び相手をしてやっているつもりでしたが、実は僕が遊んでもらっていたのかもしれません。 あなたが小学生の時に、僕はいじめられていました。だけどあなたの兄がそんなに情けない人だと教えたくなくて、ひた隠しにしていましたね。 だけどあなたは気づいていた。そして僕のプライドを考慮してなにも知らないふりをしてくれていました。 僕の妹はこんなに優しいんだぞ、と、今胸を張っていうことができます。 昔から父はあなたに厳しかった。そして僕にも厳しかった。その厳しさは僕らにとってまったくありがたいものではなかったが、あなたはいつも笑っていました。 あなたが笑えていないことに気づいたのは、ずっと昔からです。僕はあなたになにもしてやれませんでした。夜中に机で泣いていたことを知っています。友達がいないのを心配されないように、一人で待ち合わせをするふりをしていたのを知っています。 ごめんなさい。あなたにとって、僕の背中は頼りなかったでしょう。それでも僕は、あなたが大切だった。あなたを助けられなかった。ごめんなさい。
雪月真冬
雪月真冬
雪月真冬と申します。実を言いますと昔pixivによくお邪魔させていただいていた者です。年齢不詳でお願いします。男子です。フォローしてくれたら嬉しいです。是非フォローしてください! (腐男子です。地雷な方は避けてください)