木漏れ日のウィンク ♯1

木漏れ日のウィンク ♯1
 『音のないピアノ』 私には「色をつける」ということがよく分からない。 美術はいつも飽きてしまうし、絵の具パレットも筆もいつも固まったまま。まずどうすれば世界に色がつくのかすらわからない。 試しに筆と赤と書かれた絵の具をとり、近くにあった画用紙いっぱいにのばしてみた。それでも私には、灰色にしか見えない。 「ウィンク、私どうすればいいの?」 「この前言ったよ。色は人間の心によって変わるって」 違う。私が聞きたいのはどうすれば色をつけられるのかであって、そんなことではない。 「……心の色を変えれば世界が変わる?」 ウィンクはニコリと笑ってみせた。返事はしなくとも、それが答えだとわかった。
きのこ
きのこ
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