2話

2話
「おはようございます」  現場事務所におそるおそる入る。今日から私の職場はここになるからもっと堂々と入れば良いのだろうけど、あまり来たことがない場所は緊張する。  五年もこの工場に勤めているが自分の職場と休憩所、トイレくらいしか行ったことがない。        事務所は中にいる人が無言でずっとパソコンをカタカタ言わせていて怖いイメージがあるから苦手だ。 「おはよう。藤代さんだよね? 始業までここの席に座って待っててもらえるかな。朝礼が終わってから仕事の説明するね。あ、俺、藤代さんと同じ改善チームの野中《のなか》だから。よろしくね」 「はい。よろしくお願いします」  誰にも声をかけられず入口で立ち尽くしていた私に眼鏡の男の人が話しかけてきた。野中さんの案内のもと、窓際の空いているデスクに座る。
飛鳥
飛鳥
気づいたら百合小説書いてる人