星河灯台夜行譚 第十章【砕けた朝】
硝子の湖が砕けたとき、世界は一瞬だけ音を失った。
ぱん、という高い音が空気を切り裂き、次いで薔薇のように小さな破片が床の上で光った。
朝は来たのか、それとも朝の名残が破れたのか、区別がつかない。風は冷たく、硝子のかけらは淡く星を映していた。
透と彗は互いの顔を見合せた。ふたりの手はまだ繋がれている。透の胸には、先刻まで言いかけては止まった名前の残り香が残っていた。
言葉にならなかった断片が、空気の中で小さく震えているようだ。
湖の中央にいた少年−−−−−−名前の在処を告げた彼の姿は、砕ける直前に薄れていった。彼は消えたわけではない。硝子の欠片のあちこちに、淡い残像となって貼り付いている。見る者が覚悟を持ってひとつを拾えば、そこから小さな場面がこぼれ出すだろう。それは思い出ではあるが、同時にそれを拾った者のこれからを変える約束でもある。
彗はひざまづき、床に散らばる小さな破片を手のひらで受け止めた。触れると、破片の端に小さな光が宿り、彗の顔に薄い色彩を差した。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2026/4/20 9:39
さやかオンザライス
文学が好きです。浮かんだ物語をアウトプットしに来ました。荒削りですがよろしくお願いいたします👳🏻♂️