第4回NSS 『私は林檎。毒々しい魔女の悪感情を受け止められる唯一無二の果実』

 昔々、人里離れた森で暮らす美しい魔女がいた。魔女は傲慢に世界を見限ったというのに、自身よりも美しい存在を許さない。  嫉妬、不満、執着、猜疑、嫌悪。  俗世を捨てられない魔女のとめどなく溢れる感情は、長い月日をかけて、私という深紅の毒を実らせた。 「これをあの娘に食べさせれば、私の美しさが世界一……」  卑しく伸びた赤黒い爪で、魔女がその果実をもぎ取った。  私は「林檎」と名づけられ、雪国で小人と暮らす幼気な少女を殺すために生み出される。  断腸の思いで美しさを隠した魔女は臆病な小人を欺き、無知で愚かな少女と対面した。  不自然に瑞々しい果実、過度に甘い蜜、潤沢に含んだ猛毒が純真な少女を侵す。  ひどい人。  あなたの感情は私だけのものなのに。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
活動レベルが落ちてしまって、睡眠にリソースを割いています。 現在の執筆の優先度「書く習慣」>「Novelee」となっております。 雰囲気小説を書く人。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 2025/8/16〜 ※作品は全てフィクション ※無断転載、AI学習禁止