花見記念日

花見記念日
「もう桜が咲く季節か」  彼女は、陽の光で輝いているであろう桜を見つめていた。僕の課題が終わるまで待っている、と僕の前の席に腰掛けて終了まで見届けていたはずだが、数分経った今でも変わらない光景に飽きてしまったのだろう。また、彼女は時計を気にしている。 「今年は、開花が早いね」  シャープペンシルを動かす手を止め、窓に一目を向ける。白と青い罫線と文字しか視界に広がっていなかったばかりに、いつもより今日の桜は美しかった。 「ちょっと、課題終わらせないとダメだよ」 「ごめんごめん、つい気になって……」  急いで、課題に取り掛かるためにシャープペンシルを手にした。カリカリという書き進める音と、彼女が気にしている時計の進む音が、教室から鳴り響く。 「もー! 休憩にしよ!」 「え……もうすぐで……」  あと少しで終わりそうな課題に取り掛かろうとしても、彼女は僕の腕をガッと掴んで引く。
山芋とろろ
山芋とろろ
短編作者。恋愛物を書きます。 私の作品が皆様の癒しになりますように。 投稿頻度少なめ