昼想夜夢
今日は、卒業式。僕にとって、ずっと待ち望んでいた行事のはずが、そうでなくなった。隣の席の彼女が、この卒業式が終われば、東京へ行ってしまうからだ。ただのクラスメイトだからと割り切ろうにも、心は此処になく。どうやら彼女が掴んでいったみたいだから、どうにも他人事だと、いつもみたいに割り切れないのだ。
今日だって、彼女は僕が教室に姿を現せば、分かりやすい反応を見せるのだ。僕は、それに気づかないふりをして。いや、反応をしないように目を逸らした。
東京に向かう彼女を追いかけても、彼女は可愛らしい。僕よりも素敵な男性に恋に堕ちて、幸せになってほしい。そう思うことにした。
「おはよう」
彼女を見ない様に窓の向こうを見つめる僕にめげず、今度は挨拶をする。
「おはよう」
迷った挙句、挨拶を交わした。僕から会話を進めるわけではなく、ただ黙り込む。風の音や生徒の喧騒が心なしか僕には、心を落ち着かせてくれる休息時間となっていた。彼女の名を呼ぶ声が教室に響く。彼女は、その声の主である彼女の友達の元まで駆け寄る。僕は、その姿を少しだけ見つめた。
僕は、もっと恋愛にひた走れば良かった。彼女が、東京に行ってしまうだなんて、最近まで知らなかった。しかし、今。彼女に想いを伝えるには遅い。昨夜、寝る直前のベッドの中。僕は、この想いに蓋をした。僕の身勝手な言動で、彼女が困っている顔は見たくない。
今、僕の目に映っている太陽が輝いている時の、暖かな笑顔のままで、明日を迎えてほしいから。
「一人で、なにやってんだろ……」
2
閲覧数: 38
文字数: 1365
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2026/3/16 16:14
山芋とろろ
短編作者。恋愛物を書きます。
私の作品が皆様の癒しになりますように。
投稿頻度少なめ