甘酒ゼリー
私の目は軈て涙に霞む。
杯を手にとり酒の匂いが雨の湿気を伝って鼻に触れると、それは陶酔を施すような甘美な香りで、妻の輪郭が徐々に溶けてゆく。
私の口角はあがる。目じりにシワがつく。
鎖が片足ずつ外れ、空を舞う自由な鳥になると脳は言う。
しかしまたもや私は堕ちた。
それは、私をあちらの世界へと運んではくれないのだ。心の盃はひび割れて、幸福が漏れていく。そして再び悲しみに打ちひしがれた。
私の足は軈て泥中に竦む。
ゼラチンを匙で掬い取って口に運ばせると、それは脳を刺激するような酸味が続いて、唾液にジワリと溶けてゆく。
目が覚める。心臓が鳴く。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2024/3/3 7:07
タフィー_1006
短編、物語の一欠片を書いています