狐憑きの霊

 昔は狐憑きもしくは般若憑きと言われていたその病は今も不治の病であり、多くの人間の希望を潰し、その人間の無念の魂は成仏せずにこの世に彷徨い続けていると言われている。  夜分、墓地の中にある精神病院跡地に差し掛かると不意に生臭い臭気が鼻を突き、目の前の空間が歪み、「生きて」と願い、手を合わせてくる不気味極まる女霊現る。 ただ不快に感じたその偽善霊に僕はハッキリ言う 「僕はお前に言われなくてもちゃんと生きてんだ、お前はとっくに足ねえぞ、そしてお前には何の力も無い、押し付けるな図々しい! 憑き物に魂迄喰われた化け物めー!」 「うらめしや〜」 「野良猫とて、自分で餌を取れなければ消えて行く、なのにお前は人に憑け入り、ただ無駄に人の生を貪り食うお前は野良猫以下だー」 「うらめしや〜人間ですよ〜」 「お、お前が人間なわけあるかー!近づくな!こっち向くな!ばあばあ!」 僕がそう言うとその霊は本性を剥き出した般若の様な顔に変わり、僕を睨め付けて来た。
仙 岳美
仙 岳美
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