ゴキブリ

ゴキブリ
 とある夏の夜。洋子と僕は大きなリビングで映画を観ていたが、小難しい映画の内容が途中で分からなくなり、僕は自分のカオスな人生について考えることにした。特に健太に言われたことは忘れられなかった。  あんなに良い男と親しくなれたのは、洋子の様な素晴らしい女性と結婚できたことくらい価値のあることだ。  僕は八人の女と関係を持っていて、そのうち七人とは女としての関係を持っていた。その癖僕のポリシーは不倫をしないことで、結婚したら不倫をしないとずっと決めていた。  今、僕の心の中には大きな蟠りがある。普段僕が妻が帰らぬ夕方頃に飯を放り込んでいる穴の先には、女がいるのだ。それに他にも。僕は洋子を大切にしたかったが、そんな僕の生活にはゴキブリの様にうじゃうじゃと他の女が湧き出てくるのだ。  もっともゴキブリを飼うなんて悪趣味を持った僕が悪いのだが、近頃僕は自分が自分のポリシーに反している気がしてきた。
素人作家
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読みやすくて面白いお話を書きます!