道の無い神

道の無い神
 直近で頂上の見える、小さな山。山脈の端に埋まる、小さな山。  麓にある看板にはその山の名が書いてあったのだろうが、大部分が酸化してしまっていた。名前も知られぬ、寂しい山。  その中腹、獣道の様な石の階段を登った場所。真っ赤な鳥居の奥に、陽の当たる小さな神社。参拝客のいない、寂しい神社。  そこへ住まうのは、何の力も持たぬ弱い神。名前を持たない、哀れな神。  八百万の神様は言った。 「可哀想に」  いつも一人ぼっちで可哀想、誰にも頼ってもらえず可哀想。弱くて可哀想。  八百万の神様は言った。 「怠け者め」
月影羽
月影羽
作家志望の学生 好きな作家は芥川龍之介、太宰治、フョードル・D、東真直、夜咄頼麦etc. アイコン→みわしいば様