羨望

小説家の卵である親友は、無駄がない。 承認欲求も低く見てもらえなくたって動じない。 私はこんなにも動じているというのに。 本人は殴り書きの駄文だと言っているけれど、彼女の小説には才しかなく文豪の悲観や不憫、空想を書いた文学そのものに見える。 歌しか取り柄がないと、歌というものに執着し、自己顕示欲ばかりで、能力に固執する私なんかより、もっと上の、どこか悟ったようなその姿勢が輝いて見える。 私は今日も咳で歌えない。ないものねだりばかりしている私は、このままだときっと歌手の卵としての命を落とすだろう。
榊原 霞
榊原 霞
人見知りでやんす