海月の骨

海月の骨
第二章 海月の骨 美術部での日々は、まるで夢のようだった。月食は絵が上手だった。彼女の描く絵は、いつも海がモチーフだった。青や水色の絵の具を巧みに使って、波の動きや光の反射を表現する。ある日、彼女がスケッチブックに描いていたのは、クラゲだった。透明で、ふわふわと漂う姿が、まるで生きているように見えた。 「なんでいつも海の絵なの?」私は思わず尋ねた。 月食は少し考えて、静かに答えた。「海はね、全部を受け入れてくれる。どんな形でも、どんな色でも。私の心も、そうやって漂えたらいいなって」 その言葉に、胸がざわついた。彼女の声には、どこか寂しさが混じっていた。私はその理由を知りたかったけど、踏み込む勇気はなかった。
くろねこ
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主に百合小説を書きます 甘酸っぱいひと時の青春