第7回N1『彼方よ、愚かであれ』
『白い喪服』
「大体、そうやって死を悲しくしてしまう方が無礼というものじゃないのか。避けようのない平等な終末を、なぜお涙頂戴のイベントにしてしまう。自分自身が死んだとき、そう悲しんでもらいたいからか。そっちの方が大無礼じゃないのか」
叔父さんが式場にやって来たのは、蝉が空気を読んでくれない真昼のことであった。
その他親族の猛烈なバッシングに迎えられた叔父さんは、冒頭の論説を繰り広げる。純白のシャツに、純白のスラックス。穢れは一ミクロンも御座いません。黒一式の喪服軍団に対して、彼はレフェリーのような出で立ちだった。
それは叔母の葬式であり、僕にとっての叔母だから、もちろん叔父さんにとっては妻の葬式になる。人伝に聞いたところによると、かの奥方はテトロドトキシンの誤飲に由来する神経麻痺で命を落としたのだという。現場に残されていた大福と湯呑みが全てを物語っていて、それは、叔母が気に食わない男に一泡吹かせるための常套手段だったらしい。僕としては、あまり関わりがない人物であったがために何とも思わなかったので、叔父さんの登場には、困惑すると共に一種の高揚を感じていた。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/8/7 16:58
最終編集日時: 2025/8/7 17:07
ot
フォロバしますが、投稿しなくなったら凹んで外します。