星の話はやめようか。
一章 星に願いを
顔の皮を剥がんとする北風に舌打ちをした。冬はやっぱり嫌いだ。人間、呼吸が無ければ生きられないというのに、息を吸う度に喉を突き刺すような冷気が体を駆け巡る。朝から零度を下回って、働く人々の末端を容赦なく突き刺す冷気。ここまで寒くしておいて雪も降らせない冬が、小学校の時のレースで手を抜いたアイツのように見えて俺は嫌いだ。
夜中、帰宅途中で自販機に寄り、コーンクリームを買った。普段は缶の底に溜まるコーンが嫌で買わないのだが、あまりの寒さと空腹に思わず指先が伸びた。なんとなくベンチに座って空を見上げると、缶の温かさが冷え切った指先からじんわりと広がった。ふいに溢れた息は白く濁り、そしてふっと消えた。満天の星空が街を照らす。冬だからかハッキリと、より輝いて見えた。コーンクリームを飲みながら、無駄に眩しいこの星にいつの間にか引き込まれていった。短い間隔で並ぶ星々をなぞる。俺はこの星の配列に見覚えがあった。オリオン座だ。幼い頃に神話も成り立ちも調べず、ただそれだけを何度も遅くまで探し、母を困らせていた事を覚えている。
コーンクリームのコーンが底に張り付いてきた頃、俺は一筋の流れ星を見た。流れ星に願い事をすると叶う、なんてジンクスがあったのを思い出し、馬鹿馬鹿しいと心の内で笑い飛ばした。しかし、次々と流れる星の輝きに魅入る内、心の奥底からの願いが口から溢れ出た。
「やり直したい…全部」
本当に後悔の連続だった。人生が選択の連続だと言うなら、俺は必ず間違ったほうを選んでいたに違いない。それくらい、今の俺は昔の理想や幸福から程遠い人生を送っている。星に願ったところで叶うわけがない。非現実的だ。そう、また笑い飛ばした時だった。車の唸りも北風の嘶きも、周りの音全てが消え去り、完全な静寂が俺を包んだ。そして、代わりに無機質な声が耳鳴りと共に降り注ぐ。
『願いを確認しました。』
思わず見上げると、上から人が降りてきていた。フリルが贅沢にあしらわれたレモンイエローのミニドレスが、傘と共にふわりふわりと舞う。その少女が、まるで風に吹かれた花びらのような華麗な着地を見せた瞬間、彼女の爪先から白い光が円状に広がり、俺を包んだ。
暫くして、光を遮ろうと眼前に並べた腕を下ろし、瞼を開けた。そこはさっきの場所とは全く違う、ただ圧倒的な“光”が、闇に延々と続く道を作っていただけだった。思わず足元を見る。俺は、そのすべての道が集まる分岐点に立っているようだ。
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2026/5/27 9:35
最終編集日時: 2026/5/28 9:06
あいびぃ
自己紹介カード 発動!!!
【レベル】15
【属性】ちゅー学生
【習性】投稿頻度不安定、定期的に更新不可になる、フォローもフォロバも気分次第、❤︎とコメントくれる人を好む、困ったら募集に参加
【特性】どんな作品にもファンタジーが香る
【メッセージ】
初めまして、あいびぃです!
見つけてくれてありがとう♪
私自身、生粋のアニオタ・漫画オタなのでファンタジーが多めになってます…多分。
詳しいことは「自己紹介」にて!
まだまだ若輩者なので、応援よろしくお願いします!