IN SINGAPORE 4

 外でコーエルと鬼郭公が鳴いた。高い樹木の枝に立って黄色い嘴で葉を弄る。そんな朝一番に眼覚めたのは根津で次はサムエルだった。博戸は傷だらけで体を起こす気力もなく、BTは深夜に遊び疲れて近くで溶けた。 「お早よう御座います。お腹が減りましたな。あとで作ってくれませんか。私は買い出しに出掛けますんで」  徐に帽子を手に取り被る。義眼は外して机に置いていた。根津は少し意外そうに「俺が作るのかぁ……」と言う。その隣でサムエルは毛繕いして嘴を鳴らした。 「蜚蠊って好きですか? 中身の白い身をソースにしてみては」 「汚ねえ、ウエッ」  茶翅を引き千切ってぶりぶりした身を出すところを想像して胃液が込み上がってきた。根津の顰めっ面を見るなりサムエルは哀しそうな顔をして背を向ける。 「あら、嫌いなようですね。そんなら、別のもの買ってきますんで珈琲でも飲んで待っててください」  そう微笑むと扉から朝の街へ出て行った。根津は彼の腰に差された短刀と拳銃を記憶したが気にせず、言われた通り珈琲を注いだ。多分、伯剌西爾の珈琲豆だろう。風味が独特だが比較的まろやかである。半分飲んだくらいのところでやや中性的な風貌のBTが飛び起きて博戸の背中を平手打ちした。 「朝ダヨ! ハクト起キロ! 昨日ノネズミ! サムヱルハ?」 「あいつなら買いもん」
愛染明王
愛染明王
身の廻りに住んでいる動物達の一日を書き留めている。好きなものは菌類を含めた生物全般、そして女性。作品を此処に書き留めては読み返し、日々修正を重ねている。