明かり

『あ』は、羅列された文字達が嫌いでした。 自分の後ろに、鴨の子供のようについてくる『いうえお』が煩わしくてしょうがなかったのです。そして、『ん』が羨ましかったのです。どんな事をしても何も言われない。無価値に見えた自由が彼にとっての願いなのでした。 そして、同じように考える仲間がいました。それが、『か』と『り』です。 『か』に至っては、まるっきり同じでした。鴨の子供のようについてくる『きくけこ』が嫌い。常識を疑い、『いうえお』など、別の文字も導いていきたい。そしていつかは、『あ』のような崇高で賢い先導者になりたい。『か』は群れを離れ、『あ』の後ろを追うようになったのです。 そして『り』は、怠慢な統率者だった『ら』を嫌って群れを離れました。 矮小な群れ。つまりはら行以下を束ねているだけなのに驕り高ぶる姿が滑稽に写ったのです。それだからその地位のままなのだと。ハングリー精神とはよく言ったもので、常識を疑う力があったからこそ『あ』はあすこまで上れたのだと、『り』は考えました。そして、自分もそうなりたいと、彼女は群れを抜け、同志である『か』の後ろにつく事から始めました。
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