君が嫌い。

君が嫌い。
  ――俺は、そんなことしてない――    久しぶりに夢を見た。夢と言うよりも、長年忘れていた記憶である。高校三年生の夏、同級生の女子が死んだ。それだけの事である。……それだけの事?俺の中で何かが引っかかる。彼女の名前はなんだ? なぜ彼女は死んだ? 彼女とはどのような関係だ? 何も思い出せない。まるで、初めから彼女が存在しなかったかのように。ただぼんやりと考えていると、突然意識が遠のいた。  意識が戻ると、自分の自室ではないことに気づく。ここは、どこだ。ふと、蝉の声が聞こえてくる。おかしい。自室からは蝉の音など聞こえてくるはずがない。外を見てみると、田んぼが広がっている。まさかと思い、鏡を見ると、そこには青年期の自分が映っていた。つまり、過去に戻った、そういうことになる。彼女の記憶は…やはり何も覚えていなかった。
琉璃
琉璃
文豪に憧れた学生。