冬 −2−

初冬の、肌を刺すような寒気が僕の意識を否応無く浮上させる。曇り空の隙間から溢れるように降り注ぐ日光の中で、ランニングをしている後輩たちの姿。ブルッ。どこからとも無く吹いてきた一陣の風が容赦なく僕の肌を捨てた。温室育ちの僕には連動部は合ってないのかもしれないな……。そういえば、二学年に上がってから一度も部活に行っていないんだっけ。久々に見る後輩たちの肌は、梓とは真逆のような浅黒い日焼け肌だ。しけしげと後輩たちの身体の成長を観察する。 「おい涼!お前も走れ!」 三学年の部長、高橋 結人の指示が飛んできた。自然と体がトラックに向かう。これは、去年部活動に邁進していた自分の習慣なのかもしれない。一周半ほど走った頃にはもう、体が熱を持ち始めていた。時折吹く冷たい風も不快ではなくなっている。やれば出来るもんだな……。しかし、年下とはいえと毎日努力している人たちに敵うわけもなく、七周目を過ぎたあたりで限界が来てしまう。トラックから抜ける僕の背中に痛いほどの視線が刺さっているのを感じる。微かに辛辣な言葉が耳に届いた気がした。今日は、走れたほうかな。体力がない事には、れっきとした理由がある。でもそれを言い訳にするのは違うと思う。僕は喘息持ちなんだから、お前たちみたいな健康体とは違うんだよ!…って言ってやりたい気持ちはある。しかし、それが自分自身への言い訳に聞こえてならない。グラウンドの器でおきた小さなつむじ国が、砂を巻き上げていく。「涼。大丈夫か?」 梓は小学校が同じだから喘息についてはよく理解してくれている。その上で僕の気持ちを尊重して、部員には伝えないでくれているのだ。 「ああ。いつもよりは調子がいいんじゃないかな」 荒げた息を鎮めながら答える。ふと顔を上げるとランニングは終わったようで、ボードゲームの盤面のように規則正しく並ぶ部員の姿。それがいやに大きく見えてしまう。 「…株先輩。そろそろ行ったほうが良いんじゃない?」またしても不敵な笑みを浮かべてるよ……。口角がいつかどっか行っちゃうんじゃないか? 「フッフッフー。実はね?渡少年よ。私は今日、自主様の日なのだよ!」 「ははあ……」 「そこできみに頼みたいことがある!」
あい
色んなジャンルに挑戦したいです!温かい目で見守って下さい…。