【BL】星が綺麗な夜の話

 星がよく見える、良い夜だった。  雲一つない夜空には、チラチラと粉砂糖のように星がちりばめられている。あまり視力の良くない俺には、一つ一つの星の美しさというのはあまり分からないが、隣で夜空を見上げている男にはさぞかし美しい星が見えているに違いない。なにせ、男の視力は両目とも2.0なのだから。 「やっぱり、町の明かりがないだけで星の見え方が随分変わりますね」 「そう?なら良かった。友達に天体観測の穴場聞いて回った甲斐があるってもんよ」  ジィッと夜空を見上げたままでそう口にした男の声は弾んでいて、それが本心からの言葉であることがわかる。 そんなにも良いものが見られるものなら、眼鏡のひとつでも持ってくるんだったと早くも後悔し始めたところだった。まぁ、どうせ見るなら星よりも隣で嬉しそうにしている男の横顔だ。白い頬に薄っすら赤が差しているあたり、よほど星の美しさに嬉々としているらしい。腕を伸ばせば届く距離にいる男の顔は、眼鏡なんてなくてもよく見える。  ずっと見上げっぱなしでは首も痛かろうと気を利かせて地面にレジャーシートをひいてやる。寝転がりな、とシートを軽く叩けば男は「ありがとうございます」と少し気恥ずかしそうにしつつゴロリと寝転がった。
故食
故食
恋愛ものメインでBL/GL/NLなんでも書きます。でも多分大体BL。気が向いた時にポンと置いていきます。普段はpixivとかで二次創作書いてます。